2013.05.14 Tue

帝国ホテルの「おもてなし」を支えるDNA

株式会社 帝国ホテル 執行役員東京副総支配人 犬丸 徹郎 氏

株式会社 帝国ホテル 執行役員東京副総支配人 犬丸徹郎

「伝統は常に革新の中にある」という精神

 今年で開業から123年。明治から大正、昭和、平成を通じて近代日本の移り変わりを見守り続けてきた「帝国ホテル」。国内外から数多くのゲストを迎えてきた実績はよく知られており、その「おもてなし」の精神を体現した接客は、ホテル業界のみならず、さまざまな業種、業界において手本とされることも多い。伝統と格式において、間違いなく日本の代表として挙げられるホテルである。

 帝国ホテルで東京副総支配人を務める犬丸徹郎は、「『伝統は常に革新の中にある』というスピリットが帝国ホテルにはあります。守るべきものは守りつつ、時代の移り変わりに対応する、というより、むしろその時代に合った新しいものを創り出していこうという精神です。そうした取り組みは、これまでの歴史の中でも、常に行われてきました」と語る。

 帝国ホテルが生みだした新しい文化の例としては「バイキング」が有名だ。客が各自、自分の食べたい料理を自ら取り分けるブフェスタイルを、1958年に日本に初めて持ち込んだのが帝国ホテルである。発案のきっかけとなった北欧のイメージと、当時公開されていた豪快な食事シーンがある映画のタイトルから名付けられた「バイキング」という呼称と合わせ、そのスタイルは日本に深く根付いている。

 また、今では極めてポピュラーな「ホテル内ウェディング」も、日本での普及のきっかけを作ったのは帝国ホテルだったという。

株式会社 帝国ホテル 執行役員東京副総支配人 犬丸徹郎「ホテル内での結婚式という習慣が広まったのは、1923年の関東大震災の影響が大きかったと聞いています。震災で、従来、結婚式場としての役割を果たしていた都内の神社や施設がほとんど壊れてしまいました。そこで、比較的被害が軽微だったホテルで式を挙げるというニーズが生まれたのですね。その時代時代の空気を感じながら、ホテルの新しい役割や新たなマーケットを見つけ出していくという帝国ホテルの精神は、その時代から、現在にも引き継がれていると思っています」

 

「ハード」「ソフト」「ヒューマン」の組み合わせが基礎となる

 犬丸は、先取性や、新たなマーケットを創り出そうという試みの大切さに触れつつ、事業としての「コア」が盤石でなければ、そうした取り組みは意味を成さないと語る。

 ホテル経営であれば、建物や設備といった「ハードウェア」、その中で働く従業員という「ヒューマンリソース(人材)」、さらにその人材とハードを組み合わせて顧客満足度の高いサービスを生みだす「ソフトウェア」が「コア」を構成する三大要素だ。これらの要素をうまくリンクさせることが、事業の確固たる基礎になるのだという。

株式会社 帝国ホテル 執行役員東京副総支配人 犬丸徹郎「自動車をうまく走らせるために必要なことを考えてみましょう。ハードにあたるのは車の外観や内装です。ソフトにあたるのは、その駆動力を生みだすエンジンの仕組みやパワーです。そこから、『快適な運転』という目的を遂げるためには、運転者(ヒューマン)と車のインターフェースと、そのフィードバックが素晴らしいものでなければいけない。ホテルも一緒で、どれかの要素が少しでもかけていてはだめです。これらすべてがうまく組み合わさって動くことで、初めてお客様の満足度を高められるのです」

 帝国ホテルが、質の高いサービス、顧客に満足してもらえるサービスを常に提供し続けることを目指すにあたって、その最も強いよりどころとなっているのは、やはり「顧客の声」だ。帝国ホテルでは、顧客の声を聴くための基本的な施策として、コメントレターを回収し、書かれた指摘に基づいた改善策の立案や実行を迅速に行うための取り組みを行っている。

「中にはもちろん厳しいご指摘もあります。しかし、それはお客様がわれわれに期待してくださっているからこそ出てくるものなんですね。それに対して、どのように改善ができるかを誠実に考え、実行していくことが重要です。私たちにとって最も恐ろしいのは、何のご指摘もなく、二度と当ホテルをご利用いただけなくなってしまうことですから」

 

「100-1」は「99」ではなく「ゼロ」

 顧客の声を収集し、そこから顧客満足度に関する指標を導き出して改善していくという試みは、今や多くの企業が取り組んでいるものでもある。犬丸も「データから実際の数値として表される満足度も重要な指標。その数値が上がることで、現場の士気は上がり、それが良いスパイラルにつながっていく」とする。一方で「その指標ばかりにとらわれることで、本質を見失ってしまう恐れもある」と指摘する。… 続きを読む

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犬丸 徹郎(イヌマル テツロウ)
1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、スイスのホテルスクールである「エコール・ホテリエ・ローザンヌ」に学ぶ。卒業後、他社での勤務を経て1997年、帝国ホテルに入社。レストラン部長などを歴任し、2009年より東京副総支配人を務める。

株式会社 帝国ホテルについて
■ 事業内容ホテル経営
■ 設立年月1887年12月14日
■ 本社所在地東京都千代田区内幸町1丁目1番1号
■ 資本金14億8,500万円(2013年4月現在)
■ 従業員数1,262名(2011年度期末現在)
■ 業種サービス業
■ ホームページ

http://www.imperialhotel.co.jp/

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