2013.03.06 Wed

世界を制したリーダーの組織マネジメント(後編)

サッカー指導者 佐々木 則夫 氏

サッカー指導者 佐々木則夫

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経験に基づく「判断力」と「勘」

 不測の事態が起きたときへの対応力はリーダーの資質の一つに挙げられる。場合によっては、瞬時に難しい判断を迫られることもあるだろう。仮にその判断が良い結果を招いたとしても、リーダーの対応次第では、部下たちの心が離れ組織がバラバラになってしまう。世界を相手に戦う佐々木則夫が持つ対応力とはどのようなものだろうか。

 「これまで練習や試合を積み重ねてきた中で、チームの空気感と1人1人のポテンシャルを自らの眼力で確認しておくことが即座の判断につながります。たとえば、2011年のサッカー女子ワールドカップ決勝ではアメリカに1点リードを許していた延長戦終了直前に、澤選手が同点ゴールを決めてPK戦までもつれ込みました。PK戦を蹴る順番は、出場している選手のなかから、わずかな時間で選手の特性を考慮し、決断を迫られます」

 選手からすれば「蹴りたくない」のが本音のPK戦。そんな心理状況を察知しつつ、どのような人選にするのかを即決しなければならない。そして、PK戦の順番を選手に伝えたところで、不測の事態が起こった。

 「4番目に指名した澤選手が『私は蹴れない』と言ってきた。彼女は2006年のアジア競技大会決勝で、初優勝がかかったPK戦で失敗したことがあったんです。エースでキャプテンの澤選手が『蹴れない』。これは思いつきのわがままではないな、と即座に判断しました。そこで、『すごい同点シュート決めてくれて、この場面作ってくれたのは澤なんだから許してやろうな』と言ったんです。選手はすかさず『ずる~い』と言ったんです。『ズルい!』じゃなくて『ずる~い』。言う前から選手たちからどんな反応があるか確信めいたものはありましたけど、決勝のPK戦という重圧のなかで、チームを良い雰囲気が包んだんです」

サッカー指導者 佐々木則夫 ワールドカップ決勝の舞台で、なでしこジャパンの輪に笑顔が咲いた。その空気を作ったのは、もちろん佐々木が発した一言だ。対して土壇場で同点に追いつかれたアメリカは、ショックを引きずったままPK戦に突入。蹴る前から勝負は決していたのかもしれない。

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佐々木 則夫(ササキ ノリオ)
1958年、山形県生まれ。帝京高校、明治大学を卒業後、日本電信電話公社に入社し、NTT関東サッカー部(現大宮アルディージャ)でプレー。現役引退後は指導者の道に進む。なでしこジャパンではコーチを経て、2008年1月より監督に就任。2011年女子W杯で優勝、2012年ロンドンオリンピックでは銀メダルに導く。アジア人初となる2011年度FIFA女子年間最優秀監督賞を受賞。

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